スレ企画[お題で妄想]その5

[お題で妄想] その5の1 「巨乳」「ハードパンチャー」「強いという自覚のないおっとりお姉さん」
「男子プロボクサーがフルボッコにされる」「お姉さんは経験はあるけど浅い」


(>>1注※この回は、○○に皆さん自身の苗字や愛称を、□□に皆さんの好きだったり憧れる女の子の苗字や愛称を
それぞれ入れてお楽しみ下さい。例えば、エディタに一回貼り付けて置換機能を使うなどするとスムーズです)


「鮨匠 たか居」
――ああ、見栄なんか張るんじゃなかった・・・!回らない寿司屋に行く事じたい、俺の人生で初めてなのに・・・
男は、己を威圧するかのように見下ろす、檜一枚の看板に圧倒されていた。拳を握り締め、気合いを入れて戸を開く。
――男だろ、○○!・・・憧れの□□先輩と二人きりの時間を過ごせるなら、何も惜しい事なんてないはずだ!


・・・


「○○クンは飲み込みが早くって、うらやましいなぁ。私なんかさあっ・・・三年目なのに怒られてばっかりよぉ」
「いや〜、僕の力じゃないです・・・□□先輩の教え方が良かったんですよ」
「こぉ〜らっ!ホメても何も出ないぞぉ、少年?・・・でも、うれしいな。あっ追加で・・・エンガワと大トロとウニ!」


熱燗から漂う湯気に、美女の眼鏡がうっすらと曇る。所々、値札の付いていないネタがあるのは恐ろしかったが・・・
こんなにも麗しい先輩と二人きりの寿司デートをする日が来るなんて、もう死んだって構わない・・・そう男は思っていた。


男は新入社員兼プロボクサーだった。いくら客の前で試合を見せる「プロ」とは言え・・・ジムの取り分を引いた
ファイトマネーは、本当に雀の涙のようなものだ。大学時代に四回目の挑戦で何とかライセンスを取って以来
一度もその昇格はないのだから尚更だ。少なくとも一試合分の手取りが、今夜で丸々吹っ飛ぶ事は確実だった。


男が働く会社は、古くからプロボクサーの積極採用を行っている。
扱う商品について精通して貰うには、それに対する興味関心の高い若者を・・・と言うのが、会社の狙いだ。
実際、上限年齢以下の本社勤務社員の、半数以上がライセンスを持っている。つまりプロボクサーだ。


高い安全性と確かな耐久力には定評のある、設立86年の歴史ある総合ボクシング用品メーカー「ダンシング」
「蝶のように舞い 蜂のように刺す! DANCING」のCMで、一躍世間の注目度を上げている。


ここ十数年の観客スポーツ人気低迷のあおりを受け、ボクシング興行界自体もかつての勢いを失いつつあった。
拳に夢を感じられなくなった若者のボクシング離れによるジムの閉鎖も相次ぎ、ダンシング社は業績低迷に喘いでいた。
・・・二年前、あの広告、そしてCMを打つまでは。


自社の製品試験室のリングを舞台に、一人称視点によりギャラを節約し、ただ一人のモデルにも社員を起用する
徹底的に制作コストを抑えようとした上層部の苦肉の策が、思わぬ効果を呼んだ。


おっとりとした柔らかな佇まいながらも、眼鏡に知性を感じさせる「その女性」が、ボクササイズ用品の広告モデルとして
女性誌やボクシング雑誌の紙面に登場すると、徐々に業績の低迷は止まり・・・
CMの放映を皮切りに日本全国でボクササイズブームが爆発的に再燃し、注文の電話がけたたましく鳴り響いた。
その女子新入社員は、まさにダンシング社を救う勝利の女神だったのだ。


男に□□先輩と慕われる女子社員は、短大卒の入社三年目だった。
男は大卒の入社一年目。年齢は変わらないのだが、彼女の方が業界の先輩にあたる事になる。
□□先輩、○○クン・・・研修の中での呼び合いが、お互いの距離を幸せに縮めていき
自然と社外での付き合いも多くなって、こうして一貫いくらとも知れぬ寿司に挑んでいる今の二人があるのだった。


――それにしても、気っぷの良い食べっぷりが止まらない・・・そして、この引き締まったウエストだ・・・
――健康と綺麗を維持するトレーニングは、今も一日たりとも欠かしていないのだろう・・・
――お魚くん達も本望だよな。こんなにも芸術的な肉体の一部となって生きられるのだから・・・



[お題で妄想] その5の2


思わず、いけない事だとはわかっていても、その豊満な胸元へ視線が吸い込まれていってしまう。
内側から突き上げる重厚な肉の圧力に、紺色のジャケット、その一番上のボタンが今にも弾け飛びそうだ。


「ん?○○クン・・・どったの? はっはぁ〜ん・・・さてはぁ〜、お姉さんの魅力にノックアウト寸前なのかなぁ?
・・・お〜っと○○選手!□□選手のパンチの前に滅多打ちだぁ〜!一発!二発っ!三発ぅっ!次々と顔面を捉えるぅ〜!」
そう言うと彼女は、右ストレートの真似で、その白い拳を鼻先へ一度、二度、三度突き付け・・・
「物凄い返り血です!たまらずレフェリーが止めに入るっ!あ〜っと、フィニッシュの右ストレートが決まったぁ〜!」
四発目は、優しく鼻の頭に触れ、軟骨をグッと潰した。酢めしの匂いと心地良い圧迫痛が、男の鼻腔をつぅんと刺激する。


「はぁうッ、ふうっ・・・!たは、たはは・・・!よっ・・・よっ、ぱらっ、ちゃったのかな、□□先輩・・・」
男は己の視線の行方と、テーブルの下に隠されてはいるが今にも暴発寸前の己自身に赤面し、慌てて眼を逸らした。
――白くて、本当に綺麗な手だ・・・学生の頃ボクシングをかじっていただなんて、とても信じられないよ・・・
――食べる仕草も本当にセクシーだな、と思う・・・この、顎のほくろのせいかな・・・横に二つ、並んだ・・・!?
――横に二つ・・・!?まさか・・・!!


ドクンっ・・・!!
その艶ボクロへ記憶がリンクした瞬間、停止した血流が下半身へ殺到すると共に、男の視界が真っ白にフラッシュした。
咄嗟にお茶をこぼしたのは、男の人生最高の機転だった。ズボン表面にまで染み出た、その情欲の白濁を隠す為に・・・


・・・


結局、「男としてここは払わせて下さい」「私の先輩としての立場はどうなるのよー」などの会話を経て
ワリカンにされてしまった・・・だが、男はもう支払いの事など忘れ、ただ、自室のモニタへと全神経を集中させていた。


カーン!!
甲高いゴング音が、視聴者の注意をモニタに一気に惹き付ける。
カメラが「健康美」という語をそのまま具現化したような美女を下から舐め回し、三箇所にパンしてくる。


「蝶の・・・ように・・・舞い・・・」
リングを蹴るシューズ、ヒップを柔らかく包むトランクスと引き締まった腹筋、グローブの奥に揺れる二つの果実
それらが、社長本人による渾身のナレーションに合わせてスローモーションで映し出され・・・
特にその、スポーツブラに明らかに収まりきっていない圧倒的な肉質の躍動感に、視聴者は男女を問わず釘付けになる。


「蜂のように・・・」
カメラは、ほくろも艶やかなその唇から胸元へかけて固定される。そして、真っ赤な練習用12ozが下から持ち上がり・・・


「刺す!!」
一瞬のステップインの直後、全ての教則ビデオに載せたい程に美しいフォームの右ストレートがカメラへ迫り、炸裂する。
直撃のインパクトでヒビが入るという「画面演出」の後、見上げた眩しい照明をバックに、社名ロゴが表示される・・・


風呂上がりに、最高画質で録画した我が社のCMを堪能する事が、男の日課だった。
モニタに思い切り顔を近づけると、スピーカーから轟く、対戦相手・・・男の鼻骨の砕け潰れる生生しい「効果音」が
その正体を完全に把握しきってもいない男の内なる昂奮を更に高め、帰宅後最初のノックアウトへと導いて行く。


筋金入りの変態貴族達が集う、とあるネット上のフォーラムでも、それは伝説として語り継がれる映像だった。
女性の唇までしか映っていないので、「ダンシングの二連艶ボクロの子」については、様々な憶測が飛び交っていた。


そう、男はCMの美女・・・その右ストレートに心を撃ち抜かれ、ダンシング社の門を叩いたのだ。
――「ピンポーン・・・私が『ダンシングの二連艶ボクロの子』よ。ふふ、驚いちゃった、かな・・・この事は、内密にね」
男の上ずった声に、視線を宙に遊ばせつつ答える美女の表情には・・・どこか憂いが含まれていたような、そんな気がした。


そして現在、入社前から実はお世話になっていた彼女の指導のもと、男は充実した社員生活を送っている・・・
――□□先輩の秘密を知っているのは、俺だけなんだ・・・!
その深夜・・・男は、「しからば掲示板」の、何とも欲望に正直すぎるタイトルのスレッドを閉じると
無上の幸福感と共に、本日四度目、帰宅後三度目のノックアウトを果さんとしていた。



[お題で妄想] その5の3


男に、世間一般の人間には到底理解し難い、「その手の」特殊な嗜好があった事は事実だ。


だが、男は高校・大学とボクシング部に所属し、ボクサーとしてのキャリアは変態としてのそれよりも長かった。
プロでの戦績は2勝2敗0KO。派手なダウンもスリリングな攻防もない、全てが余りに地味で、無味乾燥な試合だった。
男のような「華のない」ボクサーに、次の試合が組まれるという保証はない・・・
しかし僅かなりとは言え、拳で金を稼いでいる「プロボクサー」としての自分を、男は誇りに思っていた。


男は見抜いていた。華やかな胸元にばかり視線が行きがちだが、ハードパンチャーに必要な筋肉が充分に走行しており
その上に、豊かな脂肪が乗っている事を。日々のトレーニングを欠かしていない証拠・・・彼女もまた、ボクサーなのだ。
同じリングに立ち、彼女のボクシングを感じたい・・・その純粋な闘魂に燃えていた事も確かだった。


翌週・・・勇気を振り絞って、男はスパーリングを直訴した。絶対に顔は打ちません、怪我もさせませんから・・・
いくら懇願しても、土下座すらしても、美女は頑なに首を縦に振ろうとはしなかった。
だが、彼女は断り切れぬ優しい性格・・・正体を明かした以上、男がこうなる事も想定し、ある物を予め用意していた。
「早まらないで、これを見てから・・・考え直して、ね? これからもずっと○○クンと、一緒に働きたいから・・・
それから、これは『社外秘』・・・誰にも、絶対言っちゃダメだからね・・・『絶対』だよ」


そのほんわかとした母性的安らぎを感じさせる美貌に、誰もがボクシングをしていたとは、にわかに信じられない。
だからこそ、彼女のボクサーとしての資質を見抜く程の男ならば、当然そのお手並み拝見といきたくなるもの・・・
女性と、それもこんなアイドル顔負けの美女と拳を交える機会など、ありえないからだ。


彼女自身、この手段を使う度に、心の痛みを感じていた。このディスクは、彼らに美女への「恐怖」を植え付ける事で
挑戦を諦めさせる・・・つまり、彼らが男の世界で築き上げてきたプライドを砕く事に繋がりかねないからだ。


・・・


男は、大きく深呼吸してからディスクをセットし、再生ボタンを押した。それは、彼女と、彼女が打ちのめしたカメラを
リングの下から別のカメラで撮影した記録映像・・・言わばCMのメイキングビデオだった。


画面の中の彼女は、明らかに緊張していた。12ozとその双果が、ぷるぷると震えている。
「ねーちゃん、□□さんって言うたっけ?ごっついパイオツやなあ・・・まるでメロンやでしかし!」
「わっわわわ、カントクさん!あんっ、もうっ・・・どこ触ってるんですかっ!」
「ふっ・・・そうや、その意気や。あのレンズをわいのドスケベ顔やと思って・・・思いっきりカマしたりや!」
「・・・はい!」
被写体の緊張を解きほぐす、絶妙の手腕・・・だけど幾らなんでも、それは揉みほぐし過ぎだろうと、男は思った。
「よっしゃ!カーン!と鳴ったらタッターッ!とフットワーク!こいつに向かってバシーッ!それでいってみよか!」


和やかな撮影風景は、その爆裂音によって修羅場と化した。
カメラが、激しく動揺しながらもう一人のカメラマンへ駆け寄る。まるで爆破テロ直後のような緊迫感が現場を支配する。
カメラマンはコーナーに後頭部を強く打ち、重いカメラに潰された頭の下には、ガラス片混じりの血だまりができていた。
思わずその場に座り込んでしまった美女の姿はフレームから消え、スタッフの阿鼻叫喚だけをマイクが拾っていた。


余りにもリアルにひび割れた画面は、「演出」などではなかった。
朴訥な彼女は、ゴングを聞くとCMディレクターの指示通り右拳を撃ち抜き、分厚いレンズを叩き割ってしまったのだ。


それでも、凄まじくキャッチーな映像が撮れた事で、高額なカメラ代は個人の弁償沙汰にはならなかった。
実際、現在のボクササイズ教室でのシェアの拡大を考えれば、彼女は損害に余りある貢献を会社にしたといえる。


・・・


「おっはよー、○○クン・・・どうだった?・・・お姉さんとのスパーの件、あきらめて貰えたかな?」
男は震える手でディスクを返すと、眼の前の美しきハードパンチャーの前で、拳を持ち上げていた。
あの恐怖その物の映像を、何度も何度も眼に焼き付けるうち、魂の炎は益々どす黒く燃え上がっていたのだ。


「○○クン・・・あなたが、初めてよ・・・わかったわ。21時、リングに来て」
もはや、その身に直接恐怖を刻みこむしか、彼女には方法がなかった。



[お題で妄想] その5の4


ダンシング社には唯一の社内部活動があった。言うまでもなく、ボクシング部だ。
若いプロボクサー社員は、業務が終わればそれぞれの所属ジムへ向かう事もあって
現在は既にライセンスを失効した年齢の、ベテラン社員によるボクササイズ部と化している感もあったが・・・


本社ビル地下のエレベーターを出ると、非常階段とトイレへ続く廊下を隔てて、L字形の広大な空間が広がっている。
入ってすぐの左右には、当然全て自社製の各種トレーニング設備がひと通り揃っており
右奥、左奥、左奥の更に奥と、立派なリングが3基も用意されている。製品試験室も兼ねているのだ。
"L"の左辺外周には、バンテージから計量台まで、あらゆる自社製品がショーケースにずらりと並び
その空間は研究開発、商談から小中学生の社会科見学まで対応できる、多目的部室となっていた。


右奥の更に奥の空間は、天井まで聳える壁に仕切られ、カードキースリットと暗証番号式ロックに守られた
「立入禁止」の重そうなドアに仕切られている。恐らく、機械室か何かなのだろう・・・誰もが気にも留めなかった。


20時50分・・・眼鏡を外した彼女は、入り口から見て右奥のリングで男を待っていた。
「い、いくからね・・・よ、よけるか、ガードしてね・・・たぶん、すっごく、痛いから・・・」


カーン!!
高らかに響くゴングの音と共に、美女はその雄大な乳房を激しく左右に揺らしつつ、徐々に空間を食い尽くしていった。
まるで、迫る肉の壁だった。横に回り込むという発想すら、空間を埋め尽くすパンチの幻影に叩き潰されるようだった。
硬いロープが、男の背に当たる。たおやかな美女の激しい脚捌きが「前」へと切り替わり、隠された狂気が牙を剥いた。


コンビネーション、それもどの教則本にも載っている基本中の基本「ワンツースリー」・・・
たった三発のブローが、男の闘いの目標を、カウント10まで意識を保たせる事へ変えてしまっていた。
結局・・・返り血にまみれた美女本人による涙混じりのカウントは、7までしか聞こえなかった。


男が九死に一生を得た理由は、打ち合いを想定していた彼女が「眼鏡を外していた」という点にあった。


固く閉ざしたガードを易々と弾き飛ばす重い左ジャブは、練習用12oz二枚を隔てて、両手小指の爪すら叩き割った。
鼻骨を叩き割られる恐怖に、首を更に仰け反らせた事が功を奏した。目標を大きく上に外れた必殺の右ストレートは
顔面で最も堅牢な部分・・・額へ浅く炸裂し、皮膚と頭蓋の間の薄い肉質をグジュグジュに潰滅するのみに留まった。
止めの左フック・・・脳が激震し膝が崩れていた事も助けになったが、彼女の目測がやはり上に外れたのだろう。
狂気に加速した左拳は「打撃」から「斬撃」へ変貌し、右拳の一撃により真紫に内出血していた額を、横一文字にかすめた。
噴出した鮮血は、男の視界を赤いカーテンを下ろすかの如く染め抜いた。


短大でボクシングを始めた彼女の、対プロボクサー生涯戦績は、これで2勝0敗2KOになった。
かつて彼女の「肉体」に惚れ込んだジムの会長が、話題作りの為に男子とのエキシビションを組んだ事があった。
相手は「見に来てもらってドゥームすいません」のマイクで会場を極寒地獄に閉ざす事で恐れられた、ドゥーム一ノ谷だ。
ボクシング雑誌はページの欄外を使って、ドゥーム「失踪か」と伝えた。彼女の存在は、全く言及されなかった。
元々実力皆無の選手だった事もあって、すぐに存在自体を忘れられたが・・・真実は、違っていた。


両中手骨8箇所の骨折と、ドゥームの変わり果てた姿が、優しい彼女にこれ以上の拳闘技術の追求をやめさせてしまった。
結果的に、彼女のボクサーとしてのキャリアは浅くなった。だが、その魔拳の疼きは止まらなかった。


どのようなハードパンチャーも、パンチ力の100%を発揮しているわけではない。
自らの肉体の崩壊を抑える為の、本能のブレーキが掛かるからだ。だが、彼女は違った。
ゴングの音に反応して、理性の「タガ」が全て吹き飛び・・・野獣と化してしまうのだ。
異常な闘争本能が、自覚なく相手を叩きのめしてしまう。それも、KOという結果では済まない程に・・・
だから彼女は社外秘のディスクを使ってまで、リングに上がる事を避けてきたのだ。


「しからば掲示板」の某スレッドでも、CMのリアル過ぎる効果音に、本当に鼻を砕いてその音を録音したのではないかと
一時期話題になったが、その投稿者の冗談交じりの書き込みは、半分当たっていた。
あの生々しい壊滅音は、余りのハードパンチで12oz越しに彼女の拳の肉が潰れ、骨が砕ける音を拾っていたのだ。



[お題で妄想] その5の5


「すまんが□□君・・・私と資料室へ来てくれないか」
男の退院以来、初出社の日・・・課長に□□と呼ばれた美女は、胸騒ぎを抑えられなかった。
「まず、このサイトを見て欲しい・・・」
「えっ、こんな・・・!」
美女の両拳が握り締められ、思わず驚愕の口許を隠す。
「私も驚いたよ・・・人間の欲望というのは、本当に無限大だな・・・だが、問題はこの掲示板の存在じゃない」


「レス番9397・・・この男を、□□君は・・・知っているね?」
書き込み日時は、40分前、今日の昼休みだった。あのメイキングビデオも、地下リングでの血の惨劇も
興奮が収まらぬのか大量の誤字を挟みながらも、余りにも詳細に記録されていた。
「私もかつて、あのディスクを渡された身だ・・・君の力は知っている。彼には心苦しいが、社長直々の懲罰命令だ・・・
『終われば』、今日はもう帰っていい・・・後の『処理』は、我々がやる。よろしく頼む・・・暗証番号は、君の誕生日だ」


ダンシング社のグローブは、耐久性安全性こそライバル企業を圧倒していたが
それゆえにKO決着を呼びにくい事が、興行主からの不満としてあった。


社内ボクシング部、右奥の更に奥の空間は、よりスリリングなコーナー際での攻防を実現すべく
リング面から高さ250cmの鉄柱とコーナーマットを使用した、第四のリングだった。
社員による安全試験の最中、不幸な事故が起こり、余りの危険さに封印された魔性のリングは
来るべき「懲罰」の舞台として、人知れず残されてきたのだった。


・・・


「バンテージ、余っちゃったね・・・○○クンにも巻いてあげよっか・・・」
まず、左右の手首がトップロープに封じ込められた。
続いて、抜糸が済んだばかりの9cmに亘る裂傷を避けるように、男の眉のラインがコーナーポストヘと固定される。
「課長からこのカードキーを借りるときに聞いたわ。この部屋が使われるのは、初めてなんだって・・・」


「本当は、こうなる事が望みだったんでしょ?・・・変態クン」
男は恐怖に涙を流して必死に首を振ろうとするが、肉に食い込むバンテージがそれを固く阻んだ。
「でも、あのスレッドを見て・・・疼いちゃった。私も○○クンと同じ穴のムジナ・・・変態な女だったのかもね」


くいっ・・・
美女は見せ付けるように閃く眼鏡を直し・・・試合用8ozの紐を、口で固く結んだ。
「事務仕事で視力が落ちちゃってね・・・眼鏡をかけてボクシングするのは・・・○○クンが初めてなんだ」
自らの鼻に突き付けられる8ozに、男の情欲を何百回と打ちのめしたあのCMが、究極の臨場感と共に再生される。
「たぶん、すっごく、痛いから・・・・・・楽しんでね」


カーン!!
美女は弾丸の如く対角線上を駆け抜け、男の顔面の中心・・・鼻を、寸分の狂いも容赦も無く、ワンツーで撃ち抜いた。


左ジャブの直撃を受けた鼻骨は粉微塵に砕け、人へ決して向けてはならぬ初速で放たれた右ストレートの猛威は
硬いボクシンググローブとコーナーの狭間で限界を超えて圧し潰された男の顔面のあらゆる骨組織を木端微塵に爆滅し
行き場を失った鮮血は顔中の穴という穴、そして塞がりきっていなかった額の傷口から真紅のレーザーの如く迸った。
グローブ、頭蓋、コーナーの三重の防壁を貫通した魔の衝撃は、鉄柱を蛇の如く歪ませ轟音と共にリングを震撼させた。


止めは、テンプルやや下を突き上げるように撃つ、左のフックだった。
着弾点を中心にクモの巣状に頭蓋骨の破壊が進み、布は千切れ飛び、異音と共に男の首の筋肉が骨ごと断裂する。
異常に伸び切った男の首はコーナーに巻き付くように斜め後方へ吹き飛ばされ、鮮血の帯が壁一面を犯し尽くした。
そしてつま先が浮き上がり、鮮血噴霧器と化した男はロープに背中と両手首を支点としてぶら下がったまま、静止した。


溶岩の如く噴き上がった鮮血に天井のスプリンクラーが誤作動し、血に汚れたリングを洗い流していく。
冷たい水で我に返った美女は、熱い涙を流しつつ、男の残骸へと呟いた。
「私たちは、遅かれ早かれ、こうなる運命だった・・・」


グローブを脱ぎ捨てエプロンへ舞い降りると、彼女は男の右眼へ・・・眼球があった所へ、優しく、逆さまのキスをした。
どす黒い穴から血と脳漿の混じった液体がゴボゴボと溢れると、男は左眼に安らかな笑みを浮かべ・・・そっと閉じた。
「バイバイ・・・・・・大好きだったよ、○○クン」
美女は真っ赤に砕けた両拳で、その豊満な胸元へ男の顔面をかき抱いた。


後日、ボクシング雑誌はページの16分の1を使って、○○選手「失踪か」と伝えた。