スレ企画[お題で妄想]その1

[お題で妄想] その1 「くノ一」「巨乳」「マウントパンチ」


男は追い忍だった。そしてその時まさに、己に課せられた「抜け忍を抹殺する」という任務を果さんとしていた。
男を見据えるその切れ長の眼が、月光に露わになる。紛れもない・・・五年前に姿を消した男の婚約者、あやめだった。


最愛の者を忍びに連れ去られた男は、命を捨てる覚悟を以って、あやめを助け出す力を得る為に自らも忍びとなったのだ。
愛刀の柄には菖蒲の花が浮き彫りにしてある。苦難のたび握り締めれば、蘇る少女の微笑みが勇気と活力を与えてくれた。


三日月は再び雲に隠れ、ふたりの間を冷たく乾いた沈黙の闇が遮った。
抜け忍には死の制裁を、それが忍びの掟だ。しかし・・・この男にこの女を殺す事など、出来る筈もなかった。
運命は残酷だった。こうして出会ってしまった以上、己の主に見せる「証」が必要になる・・・
男は、こう言った。全ての武器と装束、そして片耳を奪い、お前を殺した証として里へ持ち帰る。
お前は俺の事は忘れて、普通の女としての、普通の人生を暮らせ、と・・・


男は、女を杉の大樹へもたれさせ、両腕を上げるよう促した。女は口をつぐんだまま、おとなしく従った。
一瞬の違和感。その直後、無数の含み針が男の構えた両腕の手甲に刺さっていた。流石は忍びね、と少女は笑った。
自重で形が崩れる寸前まで膨らんだ乳房・・・はち切れんばかりの内圧に、肉質がさらしの隙間から今にも零れ出しそうだ。
もはや、他は調べ尽くした。暗器を仕込むならば、ここしかない。ここ、しか・・・・・・!?
触れた男の右手が、焼けるように痺れた。柔らかな乳房を包む白く硬いさらし、その外側には毒が塗られていたのだ。


するり・・・自らのさらしを巻き取り、拳にきつく巻き付ける少女。男は右腕を駆け上る痺れに、立ち尽くした。
菖蒲の刀を左手で抜き、逆手に喉を狙い突く。身を躱しながら放たれたあやめの左拳が、白刃を根本から叩き折った。
反動を活かした右の巻き打ちが男のこめかみを抉り、更に反動を増した左の巻き打ちが鉄塊の如く下顎を押し潰した。
奥歯の根が砕け、首の骨が軋む程に捻れ、頭蓋の中で脳が豆腐の如く揺れる。止めの右の爆撃は、脳へと深くめり込んだ。
毒が顔の皮膚に回るよりも早く、巻き打ちにより脳が頭蓋内壁と激突する。眼の前に流星が飛び、男は地と接吻していた。


女は躊躇いなく男に跨った。溶けていく男の視界。半分ほど巻き取られたさらしから、偉大な二つの果実が垣間見える。
死の拳が降り注いだ。横殴りの一撃で、あやめの股の下で身体が半回転し、はずみでもう半回転してまた殴られた。
男は女から全ての武器を奪った。だが、あやめにとって最大の武器は、無手・・・その二つの拳だったのだ。


覚えているかしら・・・小さい頃、二人で見た、あの蟷螂・・・女は男を跨いだまま、月を見上げ、そうつぶやいた。
男は思い出した。楽しかった子供の頃の記憶、あやめとの初恋・・・恐怖と興奮に、引きつった笑みが出てしまう。
長年恋焦がれた、あやめと身体を重ねる夢・・・それは、拳と顔面という接点で、ついに叶えられた。
将来を約束し合い、別れ、再会し、敗北した。あやめが思い描く最も濃厚なる愛の形を、男は今初めて思い知ったのだ。
柔らかな温もりと香りを残した、あやめの毒拳・・・幸せと苦しみに揺れる内、男はその狂乱の快感に目覚めてしまった。
男は失神と共に人生最大の絶頂に達した。あやめは男の手当をすると、闇の中へと消えた。


こうして男は抜け忍となった。ふたりは約束通り契りを交わし、芽生えた新しい愛の形がその絆を更に固くした。
一時の安らぎがあった。行為のたび、男は母に甘えるかの如く女の胸に腫れた顔をうずめ、女は男を優しく抱き寄せた。
・・・蟷螂の雄は、己の伴侶と愛を確かめ合った後、殺される。だが、必ずしも命を落とすわけではない。
しかし、その時がいつかは来るのだ。追い忍に殺されるが先か、あやめとの愛に果てるが先か・・・
今宵もふたりの寝所から、重い地響きと狂乱の断末魔が木霊する・・・